30代の時に10年間乗っていたバイクがヤマハTX650。
そして1999年(41歳)にカワサキW650に乗り替え、2019年にW800cafeを増車。

 TX650は高校時代から憧れていたバイク。最初に買った中型バイクのヤマハGX250はTX650の憧れが反映されたものだったと思う。

1988年(30歳)VF400インテグラに乗っていた僕はレッドバロンでTX650に出会う。中型免許しか持っていなかったけど、商談中の看板をぶら下げてもらい、一週間後に「買います」と言って金を払い、大型免許がないのに乗って帰った(笑)

必死に練習し、限定解除にチャレンジして、名古屋の平針試験所で2回で合格。

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乗っていたタイプのTX650(1978?)

 TX650はヤマハ初の4サイクルエンジンで初期の型式はXS650E(1970~)
気品ある美しいスタイリングと裏腹に、振動を少なくするバランサーが付いていないため振動が凄かった。
当時カワサキWSAW3などのライバル機種でもありオートレースでも活躍。

高速を使うツーリングでは、80キロくらいから振動が出始め、100キロ以上で巡行すると、現地に着いた時には手がしびれてしまった。結局、高速道路は80キロ前後でのトロトロ走りになってしまい。そして、クラッチが重く、300kmを超えるツーリングに行くと、腕がポンポンになり、腕を引いてクラッチを切ることもあった。

でも、センタースタンドを立て、アクセルを吹かすと、後ずさりする豪快さと、迫力の排気音。W1を男性とすると、TXは女性的なスタイルと美しいエンジンの造形は満足で、ゆっくり走れば楽しかった。そしてTX650との10年間はロングツーリングよりも、ちょい乗り、磨いて排気音を聞いている時間が増えた。



TXのクラッチの重さと振動に疲れていた僕は、1998年、カワサキから650cc2気筒のバイクが発売されると聞き、ドイツのケルンショーでの発表の写真を見て「なかなかいいじゃなか、トライアンフみたいだ」と良い第一印象。

発売されるとバイク屋でそのクラッチの軽さに感動、排気音の静かさに失望。でもマフラーは社外品に替えればOKと思い、即購入。TX650は買ったときの価格で下取りとってくれた。マフラーは購入後しばらくして抜けのイイSP忠男のマフラーに替えた。
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 W650、驚いたのはクラッチの軽さだけじゃなく、振動の少なさ!確かに80キロから徐々に、110キロまでの巡行では振動は出るけど不快なものではなく楽しめる範囲、巡行できる振動。鼓動を残し、嫌な振動を見事に消していた。

そして驚いたことに、このバイクは120キロからメーター読みで185キロまで「ブーン」とプロペラ飛行機のレシプロエンジンのように、不快な振動もなく吹き上がる。そこまでは時間はかかるけど。真夏(気温40℃)の東北自動車道を160キロ前後の速度で100kmの距離を、熱ダレをおこすことなく、手がしびれることもなく、ひょうひょうと巡行することもできた。ライダーがダウンしてしまったけど(笑)

TX65010年乗ってきた自分からすると、メーカーは違えど、30年間で奇跡的な650ccバーチカルツインのエンジンを持つバイクに作り上げカワサキは僕たちに提供してくれた。SRにこだわっていた?ヤマハは「やられた!」と思ったに違いない。

そしてW650を相棒に、僕は北海道などロングツーリングに行くことが増えた。ツーリングの相棒として、高速道路から突然現れたフラットダートまでこなせる最高のバイクだと思うし、「オートバイでの旅」という楽しい世界を教えてくれたW650に感謝している。


 

そしてW650発売から20年後、満を持してW800cafe、ストリートが登場。W650、W800のユーザーへのマーケティングで、ゆっくりバイクを走らせ楽しむ人が多いとの事を受けて、開発されたらしい。ひとめぼれでW800cafeを即購入。

低中速重視の動力性能で、高速では80キロからハンドル周りに振動が出始め90キロから110キロまでの、高速道路で良く使われるスピードでハンドルとシートに振動が大きく出る。これはあまり気持ちよくなく、TX650ほどではないけど避けたくなる。

 開発者の話として、フライホイールを重くしてあえて味として振動を出しているとのこと。それは今の技術、バランサー機能がついていて、120キロを超えると振動がピタリと収まり、180キロオーバーまで吹き上がる。でも・・ここからは風圧との戦いが待っていて、それ以上出す気にならない。バイクの作りも上質だけど、走りも上質を乗り手に求めるバイクだと思う。
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結局、W800cafeは自分の中では、高速より、下道重視となってしまっている。
振動面ではTX650やW3の事を思い出させる味のあるバイクかもしれない。
短い時間なら、という意味で。。。そしてクラッチはとても軽い(笑)

同時期に発売されたW800Streetは低速では少し薄めのシートお尻あたりに振動を感じ、こそばゆい。アップ気味のハンドルは高速では振動の幅が大きいと想像できる。振動を味としてわざと出しているというカワサキ技術陣に頭が下がるけど疑問もある。タイヤは純正よりTT100GPの方が絶対相性がいいと思う。

総括すると・・
W800cafeは高速道路を100キロで走っていると、知らないうちに90キロにスピードが落ちている。なぜだろう?高速道路で、シートから少し腰を浮かしたり、ハンドルを握る手を緩めたりして振動が出る速度のチェックをしてみた。
90キロから105キロあたりのトップギアーで走っていると、3500回転~3800回転あたりで嫌な振動が出ている。これを味というなら、この速度でクルージングするはずだけど、本能的に疲れるから避けている。
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W650はこのあたりの振動を鼓動の範囲で抑えているので、何事も無いようにビッグバイクと一緒に高速を使ったツーリングも楽しめる。
一台持つとしたらやはりW650となってしまうのは仕方ないと思う。
一言で言うと、50馬力全部を使い切る楽しさがあるバイクがW650と言えるだろう。

W800cafeは52馬力。W650とほぼ同等の馬力の内、30馬力くらいしか使っていないことになる。100キロの壁をぶち抜いてそれ以上、新東名で120キロ+で走るにはかなり体力と根性が必要だ。そして高速を使ったマスツーリングで、100キロ前後で走ると、仲間の中で一人だけ疲れることになる。ソロならマイペースでいいけど・・・。僕はW800cafeで下道での日帰りや半日ツーリングだけで3年間で1万キロ以上走った。

僕のような長距離(時には1日1000km)を一人で旅して走るライダーには心癒される鼓動は必要だけど、振動(不快)は疲れるだけで必要ない。バイクの味わいを振動と言う人がいるとしたら、短い距離ばかり走っている人、いつもゆっくり走っている人。乗りにくさを味と勘違いしている人?一人もしくは、同じバイクでつるんで走っている人だと思う。僕は40代の頃、W650で青森まで一日で1000㎞走ったことがあるけど、W800では絶対無理だし、そんな気も起きない。その位の違いがある。

手足が痺れるのはやはり気持ち良くないと思うから、W800cafeは下道(国道、県道)中心のツーリングで、高速はのんびりか、飛ばすかの2者選択で走っている。痺れるところ(味?)は時々楽しんでいる(笑)スピードを出す気にさせないバイクがW800。先代のW800は2500回転が最大トルク(現行W800は4800回転)このエンジン特性は、ゆっくり走れと言っているようなもの。W650は5000回転で最大トルクを出す。下道やワインディングロード攻めが多いからタイヤ交換は1万キロ持たなかった。

W650は700~800回転の低アイドリング、(W800は1200~1300回転)5速1000回転からスルスルとノッキングもなく加速する、こんなバイクはほかには無い。低速、中速、高速、どの速度でも楽しく走ることができる傑作エンジンで、今でもそれは変わらないと思う。何といっても、Wシリーズで一番売れたのがW650なのだから。そして排気量が少ない分、燃費も優れている。W650が平均28km/ℓ、W800は25km/ℓ。W650で北海道なら30km/ℓ~は当たり前だ。
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そして僕は、今のところW650とW800cafeの両方のオーナーになっている。
どちらも素敵なバイクだけど違う個性。それを理解できるのは乗り手の感性だと思う。

最近、W800は大好きだけど振動が原因でZ900RSに乗り替える人、2名に出会った。その人には「程度のイイW650を中古で買って、マフラーを抜けのイイものに交換、リアサスペンションを今のW800の純正に交換する。これがベストの選択だよ、乗り替える相手を間違えてる」そう言っておいた。メーカーは同じだけど別のバイクだからね。

一つだけW800の振動対策というか裏技がある。
5速100キロで3800回転前後で振動。そこで4速に落とすと4200回転になり無振動。
この回転域は最大トルク手前になり、そこからアクセルを開けるとパワフルな加速を楽しむことができる。高速を使ったマスツーリングの奥の手として使える。今度高速でロングランテストをしてみようと思っている。

高速道路4速走行は少し慌ただしく燃費は落ちるかもしれないけど振動対策になる。
高速道路はトップギアーが常識だけど、こんなバイクは他に無いから面白い。

最近のオートバイ雑誌には悪いイメージを与える記事は絶対出てこない!昔は辛口のご意見番がいたけどね。ユーザー軽視、雑誌社の試乗ライダーのメーカーへの忖度が見え隠れする世の中になった(苦笑)ちなみに1999年モーターサイクル誌の辛口テストライダー山田純氏は、発売されたばかりのW650をべた褒めしていた。W800の高速走行には苦言を呈すると思う。

もうひとつ、
W800に乗り続けるにはもう一台、高速道路を快適に走ることができるバイクが
必要かもしれない。僕はW650と他にYAMAHA TRACER、TT250を持っている。
高速メインのロングツーリングはTRACER,7年間全国40000キロ以上走っている。
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僕のW800cafeは下道がほとんどだけど3年半で12000キロ走っている。
そしてW650は24年間で55000キロ。交互に乗っているけど個性が違って飽きない。

というか、W800cafeに乗ってW650の良さを再確認し、車検を通さず置いておく
つもりが、車検を通すことになりW、2台持ちになったのです。

Wの場合、1万キロはようやくエンジンにあたりが付いてきた走行距離で。
僕は大きなトラブルもなく20万キロ走っているW650乗りを知っている。

【結論】
この記事を最初に書いてから1年以上経ちました。
その間に、W800は国産最後の空冷ビッグバイクになってしまったけど、カワサキには頑張って作り続けて欲しいと思う。そして、このエンジン、このバイクは昔のXS,TXやW1、W3などの650ccバーチカルツインと比べればだけど、わずかに、ある回転域だけ出る振動を許容できる、その振動を楽しめるライダーが乗ればいいと思う。
それには最終的には慣れること。1万キロ2万キロと走り込み、走行中に自分の体の一部のような感覚が生まれてきたら、乗りやすさを重視したバイクだらけのなか、手放せないバイクになる。カワサキはこの辺を狙ってこのバイクを作った、そして作り続けているのではないかと思う。

乗り手を選ばないZ900RS、乗り手を選ぶW800(特にcafe)。自分は現在1万5千キロほど走り、ずいぶん最初の頃より慣れてきたのを感じている。前傾のポジションにはバイクとの一体感を感じ、振動を鼓動と受け取り、楽しむ余裕ができた。これがW800の振動についての最終結論です。特にcafeは生産台数も少なく贅沢なbikeです。最近cafeのビキニカウルを外した人に会った、このカウルはデザイン上のポイントだけど高速では胸元で風が舞って快適さをスポイルするんだよね。

そして、ロングツーリングからショートはW650 、ハーフデイ、日帰り、一泊ツーリングはW800cafe。W650のオールラウンド性能、回数では年に一番多い下道でのショートツーリングでの悦楽はW800cafeというすみ分けになっています。

W800cafeはずいぶん体に馴染んできたけど、一台持つならW650だなぁ~。

高速道路を120キロ+αで巡行するとき、大きい振動は減るけど、それでもW800cafeはW650と比べ比較にならないくらい疲れるんだ・・W650はスムーズ、W800はゴツゴツしていて、SAに着くと「W800cafeでの高速は楽しくないな」と思わず口に出る。まあ、80キロで走ればそれなりだけど(笑)。そしてW650はどの速度でも、ひょうひょうとしていて普通。そしてトレーサーの高速道路は実に楽しい。

でもね、W800cafeは上質でダンディーでカッコいいんだよね。

(この記事は、一年以上かけて加筆を繰り返しました)